シロアリについて ~アリとの違いは?ゴキブリの仲間?~

シロアリについて ~アリとの違いは?ゴキブリの仲間?~

私の知り合いの家で緊急事態が発生しました。家にシロアリが出たとの事です。
寝室の柱や家具の箪笥を食害されたという話で、被害にあった家具はボロボロだったそうです。幸い早めに発見できたようなので、被害は少なくてすんだそうですが、小さいながらも集団の力とシロアリの恐ろしさを感じました。
そこで今回は、シロアリについて調べてまとめてみようと思います。

 

シロアリの特徴

シロアリは昆虫綱ゴキブリ目シロアリ科、あるいはシロアリ目の昆虫の総称です。

朽ち木など、枯死した植物(植物遺体)を食べるゴキブリの中から社会性を著しく発達させた系統の昆虫で、不完全変態のために幼虫と成虫はほぼ同じ姿をしています。

幼虫はある程度成長すると、ニンフという段階を経て生殖虫(いわゆる羽蟻)となって外へと出ていきます。この生殖虫の翅は細長くて柔らかく、4枚ともほぼ同じ大きさをしていて、「等翅類」という名称の由来となっています。

この翅は折り重なるように畳んで背中に平らに寝かせることができますが、飛行後間もなく根本で切れて脱落します。種によって異なりますが、それ以外の兵蟻や職蟻は終世翅を持ちません。

女王シロアリは世界で最も長寿な虫とされ、30~50年間生存するものもあると伝わっています。

触角は数珠状で、口器は咀嚼型。頭部、胸部、腹部はその間でくびれず、腹部は膨らんで柔らかい体をしています。日本産の物は巣の中で形どうするので白っぽく、足が短く不活発なものが多いですが、熱帯のキノコシロアリ類や餌を野外に探しに行くシュウカクシロアリ科の種類では、7ミリの穴を掘って水脈を探し、体色も白ではなく茶褐色や黒っぽいものもおり、それらは手足も長く活発な種も多いです。

林や草原における枯れ木や落ち葉等の16~60%が、シロアリの体を通して一般の動植物が再利用できるものに変えられ、生態系の維持に重要な役割を果たしています。

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生態

シロアリは全て巣穴を作り、その中に王と女王がいて、働きアリが餌を運びます。

巣穴は餌となる材の中に作るもの、地中に作る種が多いですが、熱帯や乾燥した草原に住む種は、地表に盛り上がった蟻塚(アリ塚)を作る場合が多いです。

蟻塚は土やシロアリの排泄物等で作られていて、一つの蟻塚に数百万匹が棲んでいます。

塚の壁は15cmになるものもあり、高温や乾燥から中にいるシロアリを守る働きをします。働きアリは塚の外に出て、枯れ木、枯葉、その他植物遺体を摂食するものが大半ですが、熱帯地域になると地衣類(コケ類と似ていますが、藻類を共生させることで自活できるようになった菌類)を食べるものも知られています。

高等シロアリと呼ばれるシロアリ科のシロアリには独特な生態を持つものがいて、その中にはキノコを栽培する種類もいます。

食べた枯死植物を元に、キノコを栽培する培養器を作り、それを入れる特別な巣穴を作ります。

日本では八重山諸島に分布するタイワンシロアリが地下に巣穴を掘り、巣のあちこちにキノコの栽培室を作ります。

樹上生活をするものもいて、これも高等シロアリに入り、八重山諸島の生息するタカサゴシロアリは、樹木の幹に人の頭ほどもある丸い巣を作ります。

近くの枯れた幹を餌とし、働きアリがそれを咥えて運び込みます。熱帯では、地表の枯れ木や枯葉を主に持ち込むものもあり、それらは働きアリが地表を歩いて取りに行き、餌を運ぶ働きアリ達の隊列の外側を、兵アリが守りを固めます。

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なぜ、木を食べるのか、食べられるのか?

シロアリの主な食べ物は枯れた植物で、主成分はセルロースです。

セルロースは炭水化物の一種で、植物細胞の細胞壁、食物繊維の主成分です。

ヒトの消化酵素では分解されず、雑草や木材チップを人が口にしても栄養として吸収する事はできません。

ところがシロアリは、このセルロースを分解して栄養に変える能力を持っているのです。

シロアリの中でも、腸内にセルロースを分解できる細菌やバクテリアの助けを借りて栄養に変換する種類を下等シロアリ、自力で分解して栄養に変換できる種類を高等シロアリとで分けられます。(※ちなみにヤマトシロアリとイエシロアリ等の家屋に被害を与える種類は下等シロアリに含まれます)

担子菌類と共生するキノコシロアリ類は、巣の中に菌類培養室をいくつも持っています。

野外から枯れた植物を採集してくると、まずそれを食べ、その糞を積み上げます。

共生菌がその上で成長し、糞に含まれる成分を分解します。

シロアリはその塊の底から食べていき、再び糞をその上に積み重ねていきます。

これを繰り返し、積み重なった糞に含まれる成分は分解が進み、シロアリは食べたものの中から吸収できる成分を吸収し、できなかったものを再び糞として積み上げ、全てが吸収できるようになるまで循環させます。これを枯れた植物を水と二酸化炭素になるまで分解します。

限られた範囲内になりますが、土壌を良くし、巣の近辺には無機栄養塩(※簡単に表現するなら肥料)の濃度が濃く集まることで植物の生育が良くなることが知られています。

腸内微生物の中には、PCB(ポリ塩化ビフェニル)を分解する種も見つかっています。

アリとの違いとその関係

体の大きさ、巨大な群れを作る社会性昆虫であることなど、アリとの共通点が多いシロアリですが、両者は全く異なる昆虫です。アリは蜂の仲間、シロアリはゴキブリの仲間です。

社会の仕組みについて、アリはメスを中心に女王アリと働きアリ(不妊の雌)で構成され、雄アリが生じるのが一時的なのに対し、シロアリでは生殖虫(女王と王)、働きアリ(擬職アリ)、兵アリ(兵隊アリ)等の階級にそれぞれ雌雄が含まれる。

シロアリの雌の生殖虫(女王アリ)は結婚飛行を終えてコロニーが発達してくると、腹部がソーセージ状に発達した、他の階級の個体とは大きく異なる産卵に特化した姿に変化します。熱帯に分布する大型のものになると体長5cmほどで1日に5万個の卵を産むものもいます。対してアリの女王は、グンタイアリ類等の一部を除くとシロアリの女王のように特異な外見はしておらず、他の階級の個体より体が一回り大きいくらいしか違いがない場合が多いです。アリの女王は体内に精子を貯めておくことができ、交尾が済めばほぼ生涯を通じて生殖できるのに対し、シロアリの女王は体内に精子を貯めておくことができず、定期的に交尾をする必要があります。これがアリには見られない雄の生殖虫(王アリ)が存在する大きな理由となっています。

アリの社会が女王と働きアリだけで構成され、種類によっては一部戦闘に特化した大型の兵アリがいますが、大半は分化していない種類がほとんどです。

それに対し、シロアリはほとんどの種に兵アリがいます。これはアリが基本、獲物を捕食する肉食昆虫で全ての働きアリが攻撃力を持つのに対して、シロアリは主に枯れた植物を食べる昆虫なため、基本的に攻撃的ではなく、肉食昆虫に狙われる存在だからです。

また、下等シロアリでは真の働きアリは分化せず、他の階級に分化する能力を持つ未成熟の幼虫が働きアリとして働きます。

アリ(ハチも含む)が親(女王)が自分の子のほとんど全てを不妊の働きアリ(ハチ)として真社会性を獲得したのに対し、シロアリは親が子の一部を兵アリとして不妊化することで真社会性を獲得した、という違いがあります。

アリはシロアリにとって、最も恐ろしい天敵の一つで、熱帯ではシロアリを主な獲物としているアリも少なくありません。日本ではオオハリアリなどがシロアリを捕食することで知られています。

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日本でのシロアリ

日本に分布するシロアリは、ヤマトシロアリとイエシロアリの二種類が主な種で、いずれもミゾガシラシロアリ科に分類されます。

前者は枯れ木の中に巣を作り、後者は地下に穴を掘って木くずや土でかためられた大きな巣を作ります。

ヤマトシロアリは湿った木材の中に巣を作り、広い面積を食べる事は少ないですが、イエシロアリは巣を中心にしてトンネルを掘り、乾燥した木材に水や湿った材を持ち込んで湿らせる習性があるために、食害の範囲が大規模になりがちです。

さらにイエシロアリは、巣が木材の外の地下にもあり、時には100メートル離れた場所まで被害が拡大することがあり、同時にこの特徴が防除を難しくしています。

被害は建材のみならず、書籍、立木、地下ケーブルにまで攻撃を受ける場合もあります。

また、イエシロアリは、IUCN(国際自然保護連合)によって、世界の侵略的外来種ワースト100に指定されています。

南西諸島ではシロアリの種類は10種以上を超え、その中には地下に巣を作り、オオシロアリタケというキノコと共生する関係を持つタイワンシロアリや、樹上にスイカほどの大きさにもなる巣を作るタカサゴシロアリ等、特徴的な種類もいます。

近年では、アメリカカンザイシロアリ(メキシコ北部から北米西部が原産)が増えつつあるようです。
また、鹿児島以南には日本最大のオオシロアリが生息しています。

食害の伝承と駆除

中国にはシロアリは銀を食べる、という伝承が伝わっています。清の時代の1684年、ある役所の銀の蔵から数千両(テール)の銀が紛失しました。蔵の隅にシロアリの巣があったこと以外に異常はなく、不可解に思いながらシロアリを炉に放り込んで焼き殺すと、炉から銀が出てきたという話が記録されています。(『嶺南雑記』呉震方著)

また、『天香楼外史』にも銀を入れていた木箱が、シロアリに食われて銀がなくなってしまいますが、シロアリを炉で焼いたら箱に入れていたのと同じ量の銀が出てきた、という話が載っています。

これら伝承には一部誇張もあるでしょうが、シロアリは食べ物を求めて巣から道を伸張する過程で、立ちふさがる障害物を齧って突破しようとすることが知られています。

その行動によって、銀塊が損傷したことを伝えていると思われます。

現代でも、レントゲン室の鉛板や地下に埋設された鉛管をシロアリが損傷することはよく知られています。

建築害虫とされるシロアリの駆除を専門にする業者は数多く、シロアリ用薬剤を食害部分に直接注入したり、周りに散布する方法がとられます。

和歌山県高野町の金剛峯寺には、日本しろあり対策協会が建てたシロアリの供養塔があり、毎年9月になると慰霊祭を行っているそうです。(高野山の別院参道の入り口脇です)

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利用法

トカゲ、チンパンジー、オオアリクイ、クマ等、シロアリを好んで食べる動物は少なくありませんが、地域や民族によっては食料とする人たちもいます。

人間がシロアリを食用とする場合は、採取に著しい労力が必要な上に、消化管内に枯れた植物が充満している働きアリではなく、繁殖期に巣の外に大量に現れる生殖虫、つまり雄と雌の羽蟻を集めて食料とします。

シロアリそのものを食べる以外に、シロアリが巣で育てたキノコを利用する例もあります。

シロアリタケと呼ばれるキシメジ科に属する食べられるキノコがあり、中国の一部では庭にアリ塚を移して、そこに生えるシロアリタケを食用にするとされ、日本でキノコを培養するシロアリであるタイワンシロアリが八重山諸島と沖縄の那覇周辺に隔離分布(※あるものの分布が大きく離れた地域に渡っている事)するのは、琉球王国の宮廷料理に使うために八重山から那覇へ移植されたという説があります。

シロアリの消化器官内に共生する菌によるセルロースの分解能力が、バイオエタノールの生産に役立つと琉球大学や理化学研究所等で研究が進められています。

また、シロアリ体内の共生菌の中には水素を生成する菌がいる事が確認されています。

砂漠地域では、ゴミとビニールを埋めることによる緑化、家畜と合わせた土壌改良の実験が行われていて、埋めたビニールでシロアリの巣を作り、唾液による砂の変質を行う役割を与えています。

おわりに

家じゅうをひっくり返してのシロアリ退治だった、巣の一部が天井にまで達していて、家族全員が文字通り上を下への大騒ぎだった、とは知り合いの談です。
シロアリ駆除の業者に始まって、大工、畳屋、家具屋の人達が出入りして落ち着かない状況だったとのことです。
知り合いの父親曰く、『シロアリ駆除の薬を撒くとシロアリと一緒にゴキブリも出なくなる』という話を聞きました。
シロアリはゴキブリの仲間と知った後だと、やっぱり彼らも仲間なのだなあと感じました。

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