椎茸(シイタケ)について~生態と似た毒キノコ~

椎茸(シイタケ)について~生態と似た毒キノコ~

菌を打ち込み、森で寝かせていたシイタケ栽培用の丸太を立てかける作業をしました。キノコと言えば秋の味覚の一つですが、野生のキノコは毒を持っている種類もあって見分けるのは困難です。私たちにとって身近で馴染みのあるキノコの一つが、シイタケではないでしょうか?

そこで、シイタケについて調べてまとめてみました。

シイタケについて

ハラタケ目キシメジ科に分類されるキノコで、日本、中国、韓国等で食用とされるほか、東南アジアの高山帯やニュージーランドにも分布しています。

日本においては精進料理に欠かせず、食卓に上がる機会も多く、また旨味成分が出汁ともなるので、数あるキノコの中でも知名度、人気は高いです。

Advertisement

生態

自然界では、主にクヌギ、シイ、コナラ、ミズナラ、クリ等の広葉樹の枯れ木に発生しますが、稀にスギ等の針葉樹にも発生することがあります。

短い円柱形の柄の先に、傘を開きます。枯れ木の側面に出てくることも多く、その場合には柄は大きく曲がります。傘の表面は茶褐色で綿毛状の鱗片があり、裏面は白色で、細かい壁があります。子実体(菌類が胞子を形成する際に作る構造体。一般的な植物で言えば、花か果実に当たります)の発生時期は初夏と秋で、適温は10~25℃と幅があって菌株によって差があります。

利用

日本を代表する食用キノコとして親しまれています。日本では「しいたけ品質表示基準」によって、食品としての「しいたけ」を「しいたけ菌の子実体であって全形のもの、柄を除去したもの又は柄を除去し、若しくは除去しないでかさを薄切りにしたもの」と定義されています。

旨み成分としてグアニル酸やグルタミン酸を豊富に多く含むので、食材としてだけではなく、出汁を取る際にも使われます。

グアニル酸は生のシイタケでは総重量に占める割合は少ないですが、乾燥して温度が上昇する過程で、リボヌクレアーゼやホスホモノエステラーゼ等の酵素の働きによって増加します。また乾燥することによって細胞が破壊され、旨み成分の抽出効率が上がります。

風味・食感に癖があり、ピーマン、ニンジン、グリーンピースと並んで好みの分かれる食べ物の一つです。

栄養価としては、炭水化物、食物繊維、ミネラルが主で、低カロリーな食品です。しかし、含まれるミネラル分やビタミン類の量は生育環境(栽培条件)によっては大きく差があり、公表されている数値はあくまでも目安です。

生椎茸……生椎茸(なましいたけ)は遠火で炙り焼きにしたり、鍋料理、スープ、茶碗蒸し、うどん、巻き寿司等に入れたり、炒め物、天ぷら等にして食べます。鮮度が落ちやすい食材で、切り口や傘の裏が茶色く変色したものや、開封すると刺激臭のするものは食さないことが望ましいです。

干し椎茸……干し椎茸(ほししいたけ・乾椎茸とも表記)は、椎茸を乾燥させた食品です。シイタケは乾燥させることによって旨味・香り成分が増すと化学的にも知られています。出汁を取ったり、水で戻してから煮物や佃煮等の材料にします。

戻し汁も出汁として利用され、また陽に当てて干すことによって、ビタミンD2の含有量も増えます。

成長の程度の違いから、肉厚で傘が開ききっていない(傘の開き方がおよそ7分くらい)冬菇(どんこ)と、薄手で傘が開いている香信(こうしん、本来の書き方は香蕈)、そして両者の特徴を併せ持つ中間的存在に香菇(こうこ)の三種類に区別されます。

いずれも中国での呼び方を取り入れたもので、どんこは中国語での発音に似せています。

傘の表面に亀裂のような模様が広がっているものは花冬菇(はなどんこ、中国語では花菇と表記)と呼ばれます。この他に、スライスして乾燥させた製品もあります。

シイタケエキス(出汁)……椎茸の旨み成分・風味は熱に弱いため、出汁を取る際には冷水に5時間以上漬けておく事が望ましいとされています。

干しシイタケの水戻しには超音波照射が効果的で、食品加工業者向けに超音波霧化分離技術を利用した加熱不要なシイタケエキスの抽出装置が開発され、生椎茸の栽培が盛んな徳島県で2014年に実用化されています。

シイタケエキスは、麺類のたれ等の食品のほか、保湿作用、美白作用があり、化粧品にも利用されています。

生薬……中国医学では香蕈(こうしん)と称して生薬ともしました。益気・健脾、健胃、化痰の作用があり、貧血や高血圧に効果があるとされています。

近年は、βグルカンの免疫強化、抗がん作用の研究も行われています。その他の医療目的ではシイタケ属から抽出されたAHCC(αグルカンに富んだ植物性多糖体の混合物)が健康食品として利用されています。

代替医療科学研究センターの資料によれば、シイタケ菌糸体には免疫抑制細胞を軽減する働きがあり、肝機能保護作用があると報告されています。

Advertisement

健康被害

生でシイタケを食べた場合、シイタケ皮膚炎と呼ばれるアレルギー反応が出るケースもあります。

体幹部にかゆみの強い紅斑や丘疹が発生し、掻いた痕に一致した発疹も現れます。

体質によっては、シイタケの戻し汁や十分加熱したシイタケでも発症する可能性があるので、アレルギー体質の方やお子様には注意を払ってください。

栽培と流通

古来から日本で産するキノコですが、栽培は不可能で自生するものを採集するしかありませんでした。

精進料理で出汁を取るために欠かすことができず、道元((1200年~1253年)鎌倉時代初期の禅僧で曹洞宗の開祖)が南宋に渡った際、現地の僧から干しシイタケを持っていないかと尋ねられた逸話があるほどの高価な食材でした。

江戸時代頃から、原木に傷をつける等の方法で半栽培が行われ始めましたが、シイタケの胞子が原木に付着してシイタケ菌が生育するかどうかは運任せなところがあり、成功した場合の収益は相当なものになりましたが、失敗した場合は全財産を失うという博打に近いものでした。

人工栽培の方法が確立されたのは20世紀になった頃で、原木栽培や菌床栽培されたものが市場流通品のほとんどを占めています。

一般的にシイタケの原木栽培(ほだ木を利用する栽培)では長さ1m程度に切断した広葉樹を原木として利用します。作業性を考慮して直径10~20cmの樹を利用することが多いです。原木は秋から初冬に伐採し、過度な乾燥を避けて保管され、翌早春に種菌が接種されます。種菌が接種された原木は約1年、森林に寝かされて菌糸体の蔓延を待ちます。

種菌の接種から16~18ヶ月経過後に「ほだ場」と呼ばれる栽培場所に移され、棚に原木を立てかけるようにして原木を並べて子実体の発生を待ちます。

子実体が発生するのは、通常は種菌を植え付けてから18~24ヶ月後で、3~4年間収穫(採集)が可能です。
品種改良が進んでいるので、シイタケが発生する最適な時期は品種により異なります。その地域の気候に最も適した品種を選択し、栽培することが大切となります。

原木栽培で落雷が発生すると、その周辺でシイタケが異常発生することが、生産者の間では経験的に知られています。発生の理由としては、高電圧によってほだ木内の窒素が固定(窒素固定)されて、亜硝酸塩等の窒素化合物が生成され、菌糸の養分となるからです。

仕込んだほだ木に人工的に交流の高電圧パルスを与えた栽培実験では、2~3倍の収量が得られたと報告されています。

類似する毒キノコについて

ツキヨタケ……シイタケとよく似た条件で発生し、姿もやや似ている毒キノコ。シイタケと間違えての中毒事故で、病院に担ぎ込まれるというケースが多いです。

外観は似ていて、夜間や暗い場所では青白く光ることで区別をつけられますが、古くなったものは光らない事があるので注意を要します。

毒成分は、資料や図鑑によってはランプテロールの名前で紹介される事もありましたが、アメリカ合衆国原産の毒キノコにちなんで名づけられた毒成分、イルジンと同一の物質である事が分かりました。

中毒症状は、摂食後30分~3時間で症状が現れ、下痢と嘔吐、腹痛を併発します。景色が青白く見えるなどの幻覚症状が起きる場合もあります。重篤な場合は、痙攣・脱水・アシドーシスショック(血液が酸性に傾く状態。呼吸不全、腎不全等の重篤な疾患の結果として生じる場合が多いです)等をきたすことがあり、少数ですが死亡例も報告されています。

Advertisement

おわりに

普段、店舗で見かけたり、口にしたりするシイタケが、昔は高級品で人工的に栽培されるようになったのはごく最近の話であると知りました。

現在では、シイタケは栽培されたものを食べることが前提なので誤食事故などは滅多にないでしょうが、自然から採取するしかなかった時代で、シイタケに似た毒キノコ・ツキヨタケは厄介な存在だったろうとも思いました。

英語、フランス語でもそのまま日本語に基づいて「シイタケ」と呼ばれ、フランスでは朝市や、大手スーパーマーケットでは菌床栽培のパッケージが売られています。ブラジル、フィンランド、アメリカ、オランダ等でも栽培するようになり、「シイタケ」の名前で販売されています。

海外でも普及してきているという話に、身近な存在と思っていたシイタケが大きく、またそれを取り巻く範囲が広がったような気がしました。

雑記カテゴリの最新記事