雑草、葛(クズ)について

雑草、葛(クズ)について

はじめに

散歩中に道路の脇を見れば、電柱や木、藪を長い蔓とたくさんの広い葉っぱを持った植物が覆っています。

それは葛と呼ばれるつる性の多年草らしいですが、藪や電柱、木に巻き付いて覆っている姿を見ると、いかにも藪、長い間手入れがされていない、広い範囲を覆っていて雰囲気が暗いという印象を抱きます。

今回はそんな雑草・葛について調べてまとめてみました。

葛とは

葛はマメ科クズ属のつる性の多年草です。和名はかつて大和国(現在の奈良県)の紀の川(吉野川)上流の国栖(くず)が葛粉の産地だったことに由来します。

漢字には葛の字を当てます。

地面を這うつるは、他の物に巻き付いて10メートル以上に伸び、全体的に褐色の細かい毛が生えています。

根本は木質化し、地下では長芋状の塊根となり、長さが1.5メートル、径は20センチに達します。

葉は三出複葉、小葉は草質で幅広で大きく、葉の裏面には白い毛が密生していて白みを帯びています。

花は8月から9月の秋に咲き、穂状花序(枝上における花の配列状態の一つ。主軸が長く伸び、それに柄のな

花が並んでいるもの。読みは「すいじょうかじょ」)が立ち上がり、濃紺紫色の甘い芳香を発する花を咲かせます。

花が咲いた後、剛毛に覆われている枝豆に似た扁平な実をつけます。

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生態

つるを伸ばして広い範囲に根を下ろし、繁茂力が強い上に根塊で増殖します。

昔は田畑の周囲に茂る葛のつるを作業用の材料として定期的に刈り取られていましたが、刈り取りを行わなかった場合は、短期間で低木林を覆いつくす程成長が早い植物です。

伸び始めたばかりの樹木の枝に巻き付くと曲がってしまうため、人工林では若木の成長を阻害するとして嫌われています。

地上部のつるを刈り取っても、地下に根茎が残るとすぐにつるが再生してしまいます。

抜本的に駆除する方法として除草剤があり、製品としては除草剤をしみこませた楊枝状の楔を根株に打ち込む事で効果を発揮します。

様々な昆虫のつく植物でもあり、黒と白のはっきりとした模様が特徴のオジロアシナガゾウムシ、マルカメムシはよく葛についています。

また、葛の葉に細かい虫食いの痕がある場合、クズノチビタマムシによる食痕であることが多いです。

東南アジア原産の外来昆虫、フェモラータオオモモブトハムシの幼虫は葛の蔓を肥大させて虫こぶ(ゴール)を作り、その中を食べます。

分布

温帯および暖帯に分布し、北海道から九州までの日本各地の他、中国からフィリピン、インドネシア、ニューギニアに分布しています。

旺盛な繁茂力から世界の侵略的外来種ワースト100に選定された植物の一つです。

荒れ地に多く、人の手の入った藪によく繁茂します。

近縁種

沖縄に同属のタイワンクズがあり、全体的に葛と似ていますが、葉の形や花の姿に若干の差異があります。

なお、沖縄ではほぼ同様な姿でナタマメ属のタカナタマメも道端によく現れるそうです。

人間とのかかわり

日本では古くから食用や薬用に用いられ、また天然繊維の材料としても用いられています。

葛粉……古来から大きく肥大した塊根からデンプンを取り、「葛粉」として利用されてきました。

秋から冬にかけて掘り起こしたものを砕いて洗い、精製します。

葛粉を湯で溶かしたものは葛湯と呼ばれ、熱を加えて溶かしたものは固まると透明もしくは半透明になり、葛切り、葛餅、葛菓子(干菓子)等の和菓子の材料や料理のとろみ付けに古くから利用されています。

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あまり知られていませんが、春先から初夏にかけて伸びるつる先や花も天ぷら等に調理して食用にできます。

葛根……根を乾燥させたものは生薬として葛根(かっこん)と呼ばれます。

日本薬局方(医薬品に関する品質規格書)に収録されている生薬で、発汗作用・鎮痛作用があるとされています。

漢方方剤の葛根湯、参蘇飲、独活葛根湯等の原料になり、風邪や胃腸不良(下痢)の時の民間治療薬として古くから用いられてきました。

薬用として用いる場合の採集時期は、初夏が望ましいようです。

葛花……花を乾燥させたもので、生薬名は葛花(かっか)と呼びます。開花初期の頃に房になった花の全てを採取し、風通しの良い場所で速やかに乾燥させて作ります。

有効成分は、大豆などに多く含まれているイソフラボンです。

飼料……かつては飼料として重宝されてきましたが、そういった使い道は減りました。

地方によって「ウマノオコワ」、「ウマノボタモチ」といった呼び名がありますが、馬だけではなく牛、ヤギ、ウサギ等の多くの草食動物が好んで食べます。

繊維材料……つるを煮て水にさらし、発酵させてから繊維を取り出し、これを績んで葛糸にします。緯糸(よこいと)と経糸(たていと)両方に葛糸が用いられているものや、経糸に絹や麻、木綿の糸を用いたものもあります。

葛の繊維を紡いだ糸から作られる織物が葛布(くずふ、くずぬの、かっぷ)です。

現在伝わっている葛布の製法は平安時代の頃の方法が元ですが、葛の繊維で編んだ布は新石器時代の遺跡から出土しています。

江戸時代には『和漢三才図会』(江戸時代中期の正徳2年(1712年)に大阪の医師、寺島良安によって編纂された日本の類書(百科事典))にも紹介され、衣服・壁紙に幅広く利用されました。現在では、生活雑貨や土産物として数少ない専門店で小規模ながら生産が続けられています。

遠州、現在の静岡県掛川市の特産品でもあります。

また葛のつるは長く、乾燥する前に編むことで、籠などの生活用品を作ることができます。

2008年、宮崎大学によって葛属の植物からバイオマスエタノールを抽出する技術が開発されました。

絵画や意匠の題材として……日本では古くから絵画や意匠の題材として用いられ、葛固有の小さな葉を意匠として図案化した家紋が数多く存在します。皇族・高円宮家の絢子女王のお印でもあります。

また、秋の七草の一つに数えられ、俳句では秋の季語として詠われています。

アメリカでの問題

北アメリカでは、1876年にフィラデルフィアで開催されたフィラデルフィア万国博覧会(独立百年祭博覧会)を開催した際、日本から運ばれて飼料作物、庭園装飾用として展示された事をきっかけに、東屋やポーチの飾りとして使われることになり、さらに緑化・土壌流出防止用として政府に推奨されました。20世紀の前半はもてはやされたのですが、繁茂力の高さと拡散の速さから有害植物ならびに侵略的外来種として指定され、駆除が続けられています。現在、葛の生育面積は三万平方キロメートルと推定されています。

その繁殖力から別名『南部を飲み込んだ蔓』と呼ばれているとか。

おわりに

旺盛な繁茂力で辺り一面を緑で覆ってしまう葛ですが、昔から日本人に馴染みのある植物であることを知りました。

大豆にも含まれているイソフラボンを持っている特徴を見ると、豆の仲間である事が感じられます。

葛は食用、薬用、布の材料、飼料用と幅広く活用されていましたが、時代が変わって、人々の生活様式も変わり、野山に放置されるままとなりました。

しかし、放置したままにする、単に駆除するというのも罰当たりな行いとも思います。

例えば品種改良を行う事によって普段は目立たなくても、病害虫に負けず、変化する気候に負けず、他の雑草にも負けずに、食料危機となった時には掘り出して食べられる、そんな作物が創られればいいのではないでしょうか。

そういった作物や植物があれば、今後増え続ける世界人口を支える助けになる可能性も開けるでしょう。

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