キノコの歴史と毒キノコ

キノコの歴史と毒キノコ

秋といえば、キノコ狩りが盛んになる時期ですが、そもそもキノコとは何なのでしょうか?

森の中に生えている、店舗に並べられて販売されている、毒持ちもある、と高価で貴重な種類から身近な種類、毒キノコ等と様々ありますが、今回はそんなキノコに焦点を当てていきたいと思います。

キノコとは?

キノコはカビとともに菌類という種類に含まれます。特定の菌類のうち、比較的大型の、しばしば突起した子実体(※菌類が胞子を作るための構造)あるいは、担子器果そのものを指します。(※ちなみに子実体を作らない菌類はカビです)

キノコは担子菌門か子嚢菌門のどちらかに属し、真菌類の中で担子菌門が30%、子嚢菌門は70%を占め、両者の特徴は、前者は菌糸と呼ばれる管状の細胞から構成されて細胞(担子器)の外に胞子を作る点、後者は胞子を袋(子嚢)の中に作ること、が特徴となっています。

子実体は胞子を散布する役割を担う部分で、キノコの本体は子実体の根元(※地面の場合もあれば、落ち葉、切り株等の場合もあります)に広がる菌糸体です。

先史時代の人々がキノコを食用としていた明らかな証拠は見つかっていませんが、関心を示していた証拠はあり、日本では縄文時代の遺跡から「キノコ型土製品」が出土しています。

古代エジプト人はキノコを好んで食べ、ごちそうにも毒にもなるキノコに特別な敬意を払っていましたし、古代ギリシャではヒポクラテス(※医学の父、医聖として有名)がキノコの研究で生薬としてのキノコの効果を論じています。

古代ローマ時代には様々なキノコ料理があり、中でもセイヨウタマゴタケは「皇帝のキノコ」と呼ばれ、珍重されました。

中世ヨーロッパでは、雷から生まれる、花も実もないのに何もないところから発生する謎めいた存在として、錬金術の研究対象にもなりました。

キノコの語源としては、「木+の+子」と見られます。

キノコの多くは植物やそれの遺骸(枯れた植物)を基質としていますが、中には動物の糞などの排泄物や死骸、他のキノコを基質にする種類もあります。

また、植物の根と菌根と呼ばれる器官を形成して共生し、植物から同化産物を供給されて生育するものもあります。

普通に目にするキノコの多くは地上に発生していますが、トリュフのように完全に地下に埋没した状態で発生するものあり、地域としては森林や草原に発生するものが多いです。

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食用・薬用として

食べることを基準にする分け方として、食用、不食(※まずい、非常に硬くて食用にされないもの、毒性が不明なものもあります)、毒(※または猛毒で間違って食べられるもの)で分けられます。

日本では1985年の時点で、約300種が食用にされ、うち十数種が人為的に栽培されています。

主な食用キノコには、ツクリタケ(マッシュルーム)、ヤマドリタケ(ポルチーニ)、アンズタケ(ジロール)、シイタケ、アミガサタケ(モレル)、マツタケ、セイヨウショウロ(トリュフ)、フクロタケ、等があります。

菌床栽培された食用キノコは洗いすぎると吸水し、水っぽくなったり栄養や旨味が失われるため、洗いすぎないようにして食べるのが肝心です。

キノコの効能には、抗菌、抗ウイルス、コレステロール低下、血糖降下、血圧降下、抗血栓、PHA幼若化抑制、抗腫瘍、などが報告されています。

一部のキノコは薬用として利用され、日本薬局方には、マツホド(局方名:ブクリョウ)とチョレイマイタケ(チョレイ)は生薬の材料として収載されていて漢方薬の材料として用いられます。

この他に、霊芝や冬虫夏草などが、局方外で漢方薬の材料とされることがあります。

シイタケ、カワラタケ、スエヒロタケ等からは抗腫瘍成分(※癌を抑える)が抽出され、医薬品として認められているものもあります。

採取、食べる際の注意点としては、毒キノコと間違えないことと、毒キノコでなくても加熱が不十分なままで食べると中毒症状(※シイタケの場合はしいたけ皮膚炎、エノキタケには溶血作用のあるタンパク質フラムトキシンなどが含有されています)が出る点に注意が必要です。

コウジタケ、アイタケ、ホテイシメジにはビタミンB1を破壊する作用が報告されており、調理方法には注意が必要です。

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毒キノコ

日本ではすでに知られている約2500種と2、3倍程度の未知の種類があるとされ、そのうちよく知られた毒キノコは約200種類となります。

毒には大きく4種類に分けられ、致命的となる肝臓、腎臓の壊死を引き起こすもの(猛毒)、自律神経(発熱など)に作用するもの、胃腸症状を呈するもの、中枢神経に作用し幻覚性を持つもの、です。

致命的な毒を持つキノコとして、タマゴテングタケやドクツルタケ、クサウラベニタケなどがよく知られています。

幻覚作用のある毒キノコは、メキシコやバリ島などでシャーマニズムに利用され、キノコを象ったキノコ石が遺されています。

イボテン酸を持つベニテングタケなどや、強い幻覚作用を持つシロシビン(サイロビシンとも)、シロシンを持つヒカゲシビレタケ、ワライタケなどに分けられ、致命的毒ではないものの、シロシビンを含むキノコは、乱用性から麻薬取締法と補足する政令第2条によって麻薬原料植物として指定されています。

毒キノコには、食用キノコと非常によく似た見た目をしているものもあり、毒が弱くても体調によっては深刻な症状となる例もあります。

ツキヨタケ(※『椎茸(シイタケ)について~生態と似た毒キノコ~』の記事で取り上げました)のような比較的弱い毒キノコでも中毒死した事例があります。

自然界には毒性が不明なキノコが多数存在し、従来は食用とされてきたキノコでも、実際は毒キノコだった事が判明する場合があります。

スギヒラタケは2004年に急性脳炎が多数報告され、前年の法改正(※当時流行していたSARSなどの新興感染症、炭疽菌などを使ったバイオテロに対処するために感染症法の法改正が行われました)によって急性脳炎の患者が詳しく調べられるようになり、毒性が判明しました。

ある種の毒キノコ(ベニテングタケ、シャグマアミガサタケなど)は、調理によって食用となる場合もありますが、これらは例外であって、ほとんどの毒キノコはどう調理しても食用にはなりません。

毒キノコの中毒件数は、1959~1988年の2096件の内、ツキヨタケが30%、クサウラベニタケが20%、カキシメジ5.8%、ニガクリタケ1.8%、テングタケ1.1%、種類不明が28.5%を占めています。

毒キノコによる死亡件数(1970~1990)は、ツキヨタケが14人、コレラタケ5人、タマゴテングタケが4人、ドクツルタケ3人を数えています。

毒キノコの確実な見分け方は存在せず、キノコの同定の経験に乏しい人が野生のキノコを食べるのは非常に危険です。

『たてに裂けるキノコは食べられる』、『毒キノコは派手な色で地味な色で匂いのいいキノコは食べられる』、『毒キノコでも、ナスと一緒に調理すれば中毒しない』といった話は何の根拠もない迷信なので注意しましょう。

その他の迷信に『煮汁に入れた銀のスプーンが変色しなければ食べられる』、『虫が食べているキノコは食べられる』というものもありますが、前者はヒ素など毒の一部に限られ、キノコなどの毒は対象外、後者は人間とそれ以外の生物では毒性がまるで異なる場合があります(※例として、ハエトリシメジの場合は、昆虫などには猛毒で、人間には微弱な毒性です)。

見た目が派手なキノコで食べられるものとして、タマゴタケのような食用キノコもあります。

食用キノコか否かを簡単な基準で見分ける方法は、実際に食べてみるという方法、を除けば知られていません。

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採取時の注意点

毒キノコにも注意が必要ですが、山中でのトラブルにも注意が必要です。

山中でのトラブルと聞くと、転落事故、熊・イノシシなどとの遭遇による被害をイメージしがちですが、それらの他にも他人の私有地に入り込み、そこでキノコを採取したことによる財産権の問題もあります。

商品価値の高いマツタケの生育する場所では、マツタケの採取権と土地の所有権の管理が別となっている場合もあり、注意が必要です。

また、狭い地域に多数の人が押し寄せてキノコを探し回り、踏み荒らすとキノコが発生する環境が攪乱されて、キノコの発生が減少するのみならず、その場所の生態系に大きなダメージを与えてしまう危険性があります。

キノコを収穫するだけでなく、菌糸体そのものに傷をつけたり、好適な基物(※切り株や落ち葉)を破壊すると、来シーズンの収穫の見込みが減るばかりでなく、その区域の自然の多様性を損なう恐れがあり、手当たり次第に引っこ抜くような行為は慎むべきです。

胞子を播いて食用キノコを増やそうとする行為も見受けられますが、効果に疑問があり、自然のバランスを壊す行為となります。

また、人間にとって危険な毒キノコを除去するような行為は、有益なように見えて、ただの自然破壊です。

キノコ狩りで山間部に立ち入る際には、キノコに夢中になるあまり、方向を見失って遭難してしまう例も多いです。

これは日本に限らず、イタリアなど海外でも見られる事故です。

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キノコの栽培と食用以外の利用例

染料

キノコ染料として、羊毛などを染めるのに使用されました。

着火用の火口、布

孔菌(※多孔質で硬質な波状のキノコのグループ)から作られる可燃性のスポンジ状の素材は、アマドゥと呼ばれ、紀元前の頃から火をつける際に火口や焚き付けとして使用されました。

また、フェルトのような衣類素材、水を拭うスポンジとしても利用されます。

20世紀初頭までガーゼの代わりとして販売もされていました。

農業活用、廃棄物の分解

菌根菌(※菌根を作って植物と共生する菌類)を用いた農業利用、廃棄物の分解などにも活用されます。

おわりに

世界最大の生物はキノコになるのだそうで、1992年に発見されたアメリカのミシガン州の森に生えるワタゲナラタケは、15ヘクタール(※1ヘクタールは100m×100mの範囲)の森林全体に根が広がっていたそうです。

さらにその6年後の1998年、同じくアメリカのオレゴン州東部でさらに大きなキノコが発見され、ナラタケの仲間であるオニナラタケが890ヘクタールの範囲で山を覆い、森の地下で根を張り巡らせていたそうです。

秋の味覚と思って採ったり食べたりするキノコですが、毒キノコも含めて特徴的な種類が多いです。

食べる時には、美味しいキノコに当たりたいですが、毒が当たらないように注意したいです(※質の悪いことに、その毒が最大の旨味成分となっているキノコもあるわけで……。)。

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