秋の味覚、栗(クリ)について

秋の味覚、栗(クリ)について

夏ごろ緑色をしていたクリのイガが、秋を迎えて地面に落ちて転がっている光景を見かけるようになりました。

秋の味覚の一つといえばクリですが、クリについて自分はどの程度知っているのかと思い、今回の記事を書いてまとめました。

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栗について

ブナ科クリ属の木の一種で、各栽培品種の原種として山野に自生するものは、シバグリ(柴栗)、ヤマグリ(山栗)と呼ばれます。

栽培品種はシバグリと比較して果実が大粒で、シバグリもごく一部で栽培されます。

日本と朝鮮半島南部が原産で、日本では北海道西南部から本州、四国、九州の屋久島まで、そして朝鮮半島まで分布します。

日当たりの良い山地、丘陵などに自生しますが、現在は広く栽培されるので、自然分布との境目がはっきりしない場合があります。

中華人民共和国東部と台湾でも栽培されています。

落葉性高木で、高さは15m(メートル)、幹の直径は80cm(センチメートル)、あるいはそれ以上になり、樹皮は暗灰褐色で厚く、老木になると縦長に深くて長い裂け目が樹皮に現れます。1年目の枝は赤褐色で、無毛か少し毛が残ります。

クリという名前

和名クリの語源には諸説あり、食料として古くから栽培され、果実が黒褐色になるので「黒実(くろみ)」と呼ばれ、これが転じて「クリ」と呼ばれるようになった説や、樹皮や殻が栗色ということから樹の名前となった説、クリはそもそも石という意味で、実の硬い殻をクリを呼んだ説、等です。

繰り返しとなりますが、野生種はヤマグリ(山栗)と呼ばれ、果実が小さい特徴からシバクリ(柴栗)とも呼ばれれます。

中国植物名は栗(りつ)で、中国のシバクリが、甘栗(天津甘栗)として市販されています。

英語名チェストナッツは、いがの中がいくつかに分かれている様子から、部屋の意味のチェスト(chest)から命名されています。

学名のクリ属を表すラテン語のカスタネアは、実の形から樽を意味するカスクに由来します。

日本のクリは、学名でカスタネア・クレナータと呼ばれる種で、クリ属の中でいわゆる日本種の中心を成すものです。

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利用

栗の実は古くから食料として利用され、重用されてきました。縄文時代では食料としてだけではなく、建築利用材、木具材としても極めて重要でした。

日本においては縄文時代の初期から食用に利用され、長野県上松町のお宮の裏森遺跡の竪穴式住居跡から1万2900年前~1万2700年前のクリが出土し、乾燥のために開けられたと思われる穴の開いた実も見つかりました。

縄文時代のクリは、静岡県沼津市の遺跡や、青森県の三内丸山遺跡からも見つかり、クリの実をDNA分析した結果、縄文時代にはクリの栽培がおこなわれていたことが分かっています。

クリの実は、一般的に木に成る実をもいで採取するのではなく、落ちた実をいがに注意しながら拾います。

 

調理例として、石焼にした甘栗、栗飯(栗ご飯)、栗おこわの具、茶碗蒸しの種、菓子類(栗きんとん、栗羊羹など)の材料として広く使われています。

ヨーロッパでは、焼き栗の他、マロングラッセに仕立てたり、鶏の中に栗を詰め込んでローストしたり、煮込み料理等にします。

イタリアでは、クリを粉にしてパン、クレープ、ケーキ、ニョッキなどに利用されています。

材木としては、堅くて重く、腐りにくい特徴があり、建物の柱や土台、鉄道線路の枕木、家具などの指物に使われていましたが、近年では資源量の不足から入手し辛くなりました。

成長が早く、よく燃えるので、細い丸太は薪やシイタケ栽培のほだ木として利用されます。

縄文時代の建築材や燃料材はクリが大半を占めていたことが、出土した遺跡の遺物から判明しています。三内丸山遺跡の六本の柱を持つ巨大建造物の柱にも利用されていました。

触感は松に似ていますが、松より堅く年輪もはっきりしています。

強度が高いのが特長で、堅いために加工が困難な欠点がありますが、楢よりは柔らかいです。

年間平均気温が10℃~14℃で、最低気温が−20℃を下回らない地方であれば栽培可能で、日本ではほぼ全都道府県で見られ、生産量は茨木県、熊本県、愛媛県、岐阜県、埼玉県の順に多いです。

名産地としては丹波地方(京都府、大阪府、兵庫県)や長野県小布施町、茨城県笠間市などが知られています。

これら地域では、「丹波栗」のようなブランド化や、クリを使ったお菓子、スウィーツの開発による高付加価値化やイベント開催による観光客呼び込みへの活用が進められています。

果実として採取する以外に、甘みのある栗焼酎の醸造、茶飲料、蜂蜜を採取する蜜源植物としても利用されます。

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薬用として

中国で薬用とされるクリは甘栗(板栗〈ばんりつ〉)で、日本では一種だけ自生していますが、これも薬用とされます。

薬用とされるのは、種仁(栗の実)、葉、総苞(いが)で、それぞれ栗子(りっし)、栗葉(りつよう)、栗毛毬(りつもうきゅう)と呼ばれます。

種仁は秋、葉は春から秋、イガは夏から秋に採集し、緑色が残るようにして日干し乾燥して薬用とします。

葉にはカロチンとタンニンを含み、樹皮、渋皮にも多量のタンニンが含まれています。

タンニンには、腫れを引かせる消炎作用と、細胞組織を引き締める収斂作用があります。

民間療法では、食欲不振、下痢、足腰軟弱に、種仁(実)を1日量400gを水に入れて煎じてから3回に分けて飲む、普通に食べても良いそうです。

また、ウルシ、イチジク、ギンナンなどの草かぶれ、クラゲ、チャドクガ、ムカデなどの毒虫による虫刺されや、ただれ、湿疹などに、1日量15~20gの乾燥葉やイガを600㏄の水で半量になるまでとろ火で煎じて冷やし、煎じた液をガーゼなどに含ませて冷湿布する用法が用いられます。

葉は入浴料としても用いられ、また、口内炎、のどの腫れ、扁桃炎にも、煎じた液を使ってうがいをすると良いとされています。

イガ(栗毛毬)を1日量5~10gを600㏄の水で煎じて服用もしますが、胃腸の熱を冷ます作用があるので、熱がない時の使用は禁忌とされます。

(※民間療法は、経験則に基づいた医療(もしくは医療の類似行為)です。治療効果の程はまちまちで、よく効く場合もあれば、あまり効かないもの、反対に健康被害を招くものもあります。エビデンス(根拠)に基づく治療ではないので、効果を保証したり、実践を推奨するものではありません)

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蜜源植物として

クリはミツバチの蜜の材料としても重要です。かつて栗蜜は、色が黒くて、味が劣るとして売れず、ミツバチが越冬するための植物として使われていました。

しかし、栗の蜜は鉄分などのミネラル類が多く、味も個性的で良いと見直され、ブルーチーズとよく合うと推奨されイタリア産の栗蜜需要も増えているそうです。

病虫害

戦前、中国から持ち込まれたクリタマバチによって、昭和20年代には日本全土に存在していた100種を超える品種の大半は消滅しました。

現在栽培されている品種は、その後育成されたクリタマバチに対する抵抗性品種です。

クリタマバチの被害は、1979年以降、天敵のチュウゴクオナガコバチがクリの産地で放飼された結果、激減しました。

次に問題となったのはクリシギゾウムシによる被害で、この虫は果実に害を与えます。

これまでは、収穫後に臭化メチルによる燻蒸で防除されていたのですが、温室効果が高いとして全廃されることが決定してしまいます。(※2005年に全廃される予定でしたが、2015年まで不可欠用途申請で使用されていました)

臭化メチルの代替としてヨウ化メチルが登録されましたが、ヨウ素の逼迫による価格上昇、臭化メチルと比較して沸点が高く扱いにくい、といった理由で製造中止となりました。

さらに別の代替法として、氷蔵庫(壁面に不凍液を循環させて庫内温度を高湿度のまま一定に保つ保冷庫)を使って-2℃で3週間ほど貯蔵する氷蔵処理と、50℃のお湯に30分浸して漬ける温湯処理の方法が確立されています。

日本のクリはシナグリに次いで、クリ胴枯病(※樹木の世界三大病害の一つ。クリ胴枯病菌が幹や枝から侵入し、シュウ酸を作り出して周囲を酸性化して形成層を攻撃して増殖。幹や枝の形成層が一回り全て攻撃されると水を吸い上げられなくなり、病変部から上部は枯死する病)に高い抵抗性を持つそうです。

クリが関係する文化・作品

猿蟹合戦(民話)

蟹の敵討ちに参加し、囲炉裏に隠れて熱くになったところで飛び出して、猿の顔面を攻撃。

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桃栗三年、柿八年(梨の馬鹿めが十八年、もしくはユズの馬鹿野郎十八年、梅はすいすい十六年)

種を植えてから実を収穫できるまでの期間を指すことわざ。

三度栗伝説

三度栗はシナグリの一品種で、年に三回実を付けると言われ、伝説が各地に残っています。

八里半あるいは一三里といった表現

江戸時代に日本にサツマイモが持ち込まれた際、その味がクリと比較され、クリを『9里』と重ね、『クリに近い』ので『八里半』、あるいはクリより(9里4里)うまいので『一三里』等と言われたそうです。

 

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クリの花言葉に、「満足」、「豪奢」があります。

おわりに

太陽の日差しが弱まり、涼しくなってきて秋を感じるようになり、いろいろ食べ物が美味しくなる季節となりました。

秋になると栗の時期とイメージしますが、そう考えるのに対して栗についてよく分かっていなかったと感じました。

知っていることが増えれば、知ったものについて新しい見方ができ、印象やその味もまた違ったものになるでしょう。

 

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