田んぼのジャンボタニシについて

田んぼのジャンボタニシについて

水田を見ていると、水路で目にするピンク色の粒の塊。日本の田舎の風景にショッキングピンクは似合わない、と思うのは私だけでしょうか?
そのピンクの粒の塊の正体はジャンボタニシの卵で、そのジャンボタニシは個体が大きく、また数多く水田にいます。
田植えの時期にジャンボタニシやその卵を目にしたので、今回はジャンボタニシについて調べた事をまとめました。

ジャンボタニシとは?

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ジャンボタニシの正式名称は、スクミリンゴガイ。英語ではアップルスネールという名前です。タニシと呼ばれていますが、タニシとは別の種類の淡水棲の巻貝です。
原産は南アメリカを流れるラプラタ川流域ですが、原産地以外に世界各地に著しく移入して定着しています。
大型の部類の貝で、オスは殻高25ミリ、メスは殻高30ミリが性成熟した個体(産卵できる個体)で、成体の大きさは殻高50ミリから80ミリに達します。
巻貝としては足が速く、雑食性で、植物性、動物性を問わず、水中の有機物を摂食しますが、タニシとの違いはろ過摂食ではない事です。(※ろ過摂食は水を体内に取り込んで、水中の有機物を漉しとって食べる事。タニシを濁った水の水槽に入れると、程なくして水が澄んでくるのはこのためです)
鰓呼吸のみならず肺のような器官も持っていて、空気中の酸素も利用して呼吸し、乾燥に強く、乾季などで水中から離れた状況でも容易には死亡しませんが、耐寒性はあまりないようです。
ピンク色をした卵にはpcpv2と呼ばれる神経性の毒があり、この毒は熱で変質し無害化される(マウスによる実験)ようですが、味は苦いので卵は食用向きではありません。
黄変種にゴールデンアップルスネールがおり、アクアリウムで水槽内のコケ取りに利用されています。

ジャンボタニシ=スクミリンゴガイによる被害と活用

水草を食べる性質なので水田に植わっているイネを食べてしまい、水田のイネの列に穴が空き、収穫量が減ってしまう害があります。
一方、水草を食べるスクミリンゴガイを使って除草を行い、除草剤を使わずにイネを育てる事が出来るとされています。
スクミリンゴガイは、水がない状態になると泥に潜り、休眠に入ります。
イネを植えた後、水を抜いてスクミリンゴガイを休眠させ、徐々に水を入れて水位を上げていきます。
水位が上がる間にイネが成長して硬くなり、スクミリンゴガイはイネ以外の雑草を食べるようになります。
しかし、そのためには水田の代掻きや水位調整が難しく、またスクミリンゴガイを除草手段として活用していない他の農家の水田を荒らす懸念があります。
食用として持ち込まれましたが、広東住血線虫の中間宿主(最終的な宿主はネズミ)として寄生されている危険があり、触る際や触った後に手を洗う等注意が必要です。
水槽のコケ取りとして、ゴールデンアップルスネールと名付けられた種がいますが、水草の入っている水槽では水草を食べ尽くし、強い繁殖力を活かして数を増やし、水槽を占領してしまうといった問題もあるようです。

食用として

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スクミリンゴガイは1981年、台湾から食用として持ち込まれました。最初に長崎県と和歌山県に持ち込まれ、1983年日本全国で養殖されるようになり、各地に養殖場が作られました。東南アジアでは一般的な食材として食べられています。
しかし、先に述べた広東住血線虫の中間宿主になる事と、脱走しやすい事、肝心の味が貝としてまずくはなく味は良い方であるが、特徴がないという理由で商業化がうまく行かず、放棄された養殖場から逃げ出した個体が定着して現在に至っています。
食用とする場合は、泥抜きを行い、よく火を通して加熱し、広東住血線虫をはじめとする寄生虫を無害化すると良いでしょう。
殻から貝の身を出し、内臓を取り除いて脚の部分を食材として活用します。
採取できる場所が場所なので、泥抜きや調味料(お酢などを使う)を使っての臭み取りはしっかり行ってください。
スクミリンゴガイに限らず、水底に住む魚(コイやナマズなど)、シジミなどが泥臭いと言われる原因は、ゲオスミンと呼ばれる物質が原因で、語の意味は「大地の臭い」です。
地中に住む菌類が作り出す物質で、雨上がりの際に発生する匂いの元でもあります。
酸性の条件下では分解されるので、魚介類などの食材の泥臭さを取る際にお酢などが有効なのはこのためです。
スクミリンゴガイは癖がない味らしいので、洋風の濃い味付けが合うようで、逆に和食料理では味が薄い印象となるようです。

天敵

成長した貝はカルガモ(鳥類)、スッポン(亀)、コイ(魚類)、捕食性水生昆虫、大型甲殻類等が食べます。これらを大量に放つことでスクミリンゴガイを駆除する方法があります。
しかし、放ったスッポンやコイを食用にしようと捕獲する人が現れたりと、問題もあるようです。
原産国の南米ではヒアリがスクミリンゴガイの天敵ですが、2017年に日本で発見されてその攻撃性やアナフィラキシーショックの事例等で「殺人アリ、上陸!」と大騒ぎになったのは印象深いと思います。
卵の持つ毒によって卵の段階では、ヒアリぐらいしか天敵がいません。

駆除方法

先に挙げた天敵となっている生物を使う方法。(※ただし、ヒアリは論外)
卵を見つけたら潰すか水に落とす方法。(※ただし、産卵10日後から13日後の卵塊は水に落としても孵化する。熊本農試(農業試験場)の実験で確認)
産卵直後の卵は鮮やかな紅赤色で、孵化直前になると灰色から白色に変化します。
冬場に水田を耕して泥の中に隠れているスクミリンゴガイを地表に露出させ、冬の寒さを利用して退治する方法。
佐世保工業高等専門学校電気電子工学科では、電気でおびき寄せて(負極(マイナス)側に集まる)、超音波で駆除する方法を開発したようです。

おわりに

外来種が騒がれるようになって久しいですが、日本に食料や毛皮を取る、スポーツ目的、ペット用、荷物に紛れる等の理由で持ち込まれた動植物が定着、繁殖し、日本の自然の生態系や人間社会に影響を及ぼす話をよく聞きます。

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